投資の勉強をしてると『利回り』って良く聞きますけど、金融商品によって計算方法がバラバラでややこしいです。
そうなんですよ・・・。でも、共通ポイントがあるのでソコをおさえておけば金融商品が変わっても利回りは計算できますよ!
利回りとは、簡単に言うと投資したお金が1年で何%増える(減る)かを表しています。
ですが、一言で利回りと言っても、投資対象(株・投資信託・不動産・FXなど)によって計算方法が異なり、そのやり方によって意味合いが変わってきます。
それぞれの資産の『利回り』の計算方法や意味を正しく理解していきましょう!
今日の授業は投資対象別の『利回り』について紹介するよ!
- 不動産投資における利回りの意味や計算方法
- 他の金融商品における利回りについて
- 利回り・利息・金利の違い
それぞれを早速見ていきましょう!
投資対象別の利回りの計算方法
利回りは冒頭でも紹介したように、1年間で投資額がどれくらい増える(減る)かの割合を示しています。
何かに投資して、100万円が1年後に120万円になったら、利回り20%です。
こうすると、なんだ利回りって簡単に計算できるじゃん!って思うかも知れませんが、そんな単純なものではありません。
具体的にはどんな投資対象にも共通して3つの要素が関与して利回りが決定されます。
インカムゲイン:保有しているだけで増えるお金
キャピタルゲイン:購入額と売却額の差額
コスト:購入・売却・維持に必要な経費
これらってとても大切ですから、よーく覚えておいて下さい!不動産、株、投資信託など全てのものに共通しています。
インカムゲイン、キャピタルゲイン、コストという考えは不動産投資で良く使われる言葉です。
あとで、株や投資信託などの他の金融商品における利回りについて紹介しますが、まずは不動産投資でその意味を捉えて、正しい計算方法を理解していきましょう!
不動産における利回りと計算
キャピタルゲイン:マンションなどの不動産を売った時の買値と売値の差額
コスト:管理費、修繕費、購入(売却)時の諸費用、保険料(火災保険など)、税金(取得税、固定資産税)など
インカムゲインとは保有しているだけで増えるお金のことです。
つまり、不動産投資で言えば、家賃収入のことを指します。
キャピタルゲインは、買値と売値の差額を指します。
2,000万円で買ったマンションを2,500万円で売れれば、500万円のキャピタルゲインです。
一方、このマンションを1,500万円で売れば、500万円の赤字となり、この場合はキャピタルロスと言います。
また、不動産投資には購入、売却、維持に渡って様々なコストが発生します。
購入時には不動産取得税、仲介手数料、ローンを組む時の事務手数料などがあります。
売却時には、仲介手数料、譲渡税などが発生します。
維持をしている時には、ローンの利息、保険料、固定資産税、PMフィー(マンション管理料)などがあります。
こうした様々なコストとインカムゲイン・キャピタルゲインを使って利回りが計算されます。
マンション購入価格:2,000万円
マンション売却額:2,500万円
家賃収入:10万円/月(運用期間中は満室とする)
購入時コスト:150万円
売却時コスト:100万円
維持コスト:100万円/年
運用期間:5年
このように購入・売却・維持における収入や支出を加味して利回りを計算しましょう!
不動産投資においては、単純に利回りと呼ばずに、表面利回り、実質利回り、想定利回りなどの様々な◯◯利回りという呼ばれ方があります。(上記の計算例は実質利回りになります。)
それぞれを簡単に紹介します。
表面利回り:マンションの購入額と空室率を考慮した家賃収入の利回り
想定利回り:空室率を考慮しない表面利回り(満室を想定)
実質利回り:表面利回りにコストも考慮した利回り
ん?!急に知らない言葉がでてきたけど、空室率って何??
不動産投資には空室リスクがつきものです。(入居者がいない空き部屋となるリスク)
空室になれば、その期間は家賃収入がありません。つまり、空室率とは空室期間が運用期間中に何%あるかという意味です。
一般的に不動産投資関連の利回りは空室率0%とした表面利回り(つまり、想定利回り)として表記されています。
それでは続いて、投資信託や株などの他の金融商品における利回りの意味や計算方法も見ていきましょう!
他の金融商品における利回り
ここまでは不動産投資における利回りについて紹介してきましたが、投資信託や株などでも同じ言葉はよく使われます。
一般的に利回りという言葉がよく出てくる投資対象は下記が多いです。
他にもたくさんありますが、ここから紹介するのは上記の金融商品を順に紹介していきます。
投資信託
キャピタルゲイン:買値と売値の差額(基準価額の差額)
コスト:購入手数料、売却手数料(信託財産留保額)、信託報酬料、税金(譲渡所得、配当所得)
投資信託のインカムゲインである分配金はファンドによって年に数回支払われるものです。分配金なしというファンドもあります。
キャピタルゲインとなるのは、ファンドの基準価額の差額に相当します。
投資信託にもコストとして購入・売却・維持に手数料が発生します。維持手数料である信託報酬料はどのファンドも必ず発生しますが、購入手数料と売却手数料(信託財産留保額)は0円というファンドも多いです。
計算する上でちょっとややこしいのが、信託報酬料です。
これは、手数料率を日割したものに、その日の基準価額を掛けて計算したものです。
信託報酬料1%
今日の基準価額 1万円 ⇒ 信託報酬料=1万円×1%÷365日=0.2739…円
明日の基準価額 1.1万円 ⇒ 信託報酬料=1.1万円×1%÷365日=0.3013…円
明後日の基準価額 1.2万円 ⇒ 信託報酬料=1.2万円×1%÷365日=0.3287…円
年間の信託報酬料=毎日発生した信託報酬料の総額
(※小数点以下の端数に関しては証券会社やファンドによって処理の仕方が異なる。)
このような感じで、信託報酬料の計算は日々変動するので正確な金額を計算するのは手間がかかります。
ですが、日々更新される基準価額には信託報酬料を加味した金額が表示されているので、利回りを計算する時は信託報酬料がいくらかかったを計算する必要はありません。
具体例を挙げて投資信託の利回りを計算してみます。
購入時基準価額:1万円(購入額100万円)
売却時基準価額:1.5万円(売却額150万円)
分配金:5,000円/月
購入手数料:3.24%
売却手数料(信託財産留保額):0.2%
維持手数料(信託報酬料):1%(基準価額に反映されているので計算する必要なし)
運用期間:5年
上記の計算例はインカムゲイン、キャピタルゲイン共に税引後として計算しました。実際に投資信託にかかる税金は儲けた額に対して20.315%の税金が発生します。
また、インカムゲインである分配金には、税金がかかる場合とそうでないことがあります。
投資信託における計算の詳しい解説については『投資信託の利益を計算する方法は?具体例を上げて紹介するね!』を参照して下さい。
一般的に投資信託における利回りは購入手数料・売却手数料・税金を加味して紹介されていません。
株式
キャピタルゲイン:買値と売値の差額(株価の差額)
コスト:購入手数料、売却手数料、税金(譲渡所得、配当所得)
株に関しては投資信託と似ている所が多いです。
インカムゲインに当たる配当金は年に1回払われます。(米国株だと年4回)
キャピタルゲインは売買した時の株価の差額が該当します。
コストに関しては、売買に掛かる手数料と、利益がでた時の税金(税率20.315%)です。
ここまでに紹介した不動産投資や投資信託と異なり、維持手数料はありません。
ただし、信用取引というやり方で株の売買を行った場合は維持手数料がかかります。
株の売買における利回りの計算例を挙げて紹介します。
購入時の株価:1,000円(100株=10万円分購入)
売却時の株価:1,500円(100株売却=15万円分売却)
配当:100円/100株/年
購入手数料:108円
売却手数料:108円
維持手数料:なし
運用期間:5年
売買手数料まで入れて細かく計算しましたが、
一般的に株式の利回りは株価の差益と配当金のみを入れて計算しますので、売買手数料は考慮しません。
債券
キャピタルゲイン:買値と償還時の差額
コスト:購入手数料、売却手数料、為替手数料(スプレッド)、税金
債券と言っても、個人向け国債を代表とする利付債や、割引債など様々なものがあります。
割引債の場合はインカムゲインである利子(クーポン)がなく、利付債の場合はキャピタルゲインがないことが一般的です。
コストに関しては、購入手数料はかからないはずです。(購入手数料がかかる債券を知りません。)
また、売却手数料も基本的にはかからないのですが、途中で解約した場合は発生します。
外国債券を購入する時は為替手数料がかかることがあります。
また、買値と償還時の差額や利子に対しては20.315%の税金が発生します。
ここでは、債券の代表である個人向け国債を例に挙げてみます。
購入時の額面:10,000円
償還時の額面:10,000円(個人向け国債は償還時の額面は購入時と同じです)
利子:0.0398425%(税引後) (税引き前0.05%)
購入手数料:なし
売却手数料:なし
維持手数料:なし
運用期間:10年(変動10を購入したと仮定)
個人向け国債の場合は、税引後の利子=利回りと考えてOKです。
変動10で購入した場合は、0.0398425%(税引後)の利率は保証されながらも、日本の金利が上昇すると更に上乗せされるのでそれ以上になる可能性はあります。
一般的に国債の利回りは税引き後の利子を基準に考えましょう!
FX
キャピタルゲイン:為替差益
コスト:為替手数料(スプレッド)、税金、(スワップポイント)
FXにおけるインカムゲインはスワップポイント(金利差益)です。
日本円のように低金利の通貨で、トルコリラやレアルなどの高金利通貨を買うとスワップポイントで毎日金利差益が受け取れます。
また、キャピタルゲインは購入・売却時の為替差益になります。
コストとしては、購入および売却手数料としてスプレッドが該当しますが、売買時に自動的に差し引かれるので気にしなくてOKです。
また、高金利通貨で低金利通貨を購入するとスワップポイントが毎日引かれるので維持手数料になります。
購入価格:100万円
売却価格:150万円
スワップ:100円/日
購入手数料:なし(スプレッドは購入価格に含まれる)
売却手数料:なし(スプレッドは売却価格に含まれる)
維持手数料:なし
運用期間:5年
FXにも株や投資信託などと同様に為替差益やスワップポイントの利益に対して20.315%の税金が発生します。
一般的にFXの利回りを計算する時は税金まで考慮しない額で紹介されている事が多い印象があります。
仮想通貨
キャピタルゲイン:売買差益
コスト:売買手数料 or スプレッド、税金
仮想通貨におけるインカムゲインは存在しません。この点が、これまで紹介してきたどの金融商品とも大きく異なります。
キャピタルゲインとしては売買差益になります。
コストとしては、取引所を利用した時の売買手数料になります。販売所を利用した場合は手数料は発生しませんが、標準価格から少し高く(安く)売買することになり、FXで言うスプレッドが発生します。
また、仮想通貨と他の金融商品ではもう1つが大きく違う所があります。それは税金です。
どの金融商品も20.315%の税金が発生していました。(不動産除く)
仮想通貨の場合は、雑所得扱いになり、住民税10%に加え、所得税が5%~45%(利益によって変動)発生します。
利回りの計算方法はFXからスワップポイントを差っ引いた場合と同じなので割愛します。
一般的に仮想通貨の利回りは儲けた額によって税金が変動するので、税金は考慮しないで計算されます。
預金
キャピタルゲイン:なし
コスト:税金
外貨預金の場合は為替手数料などが発生しますが、ここでの預金は国内で銀行に預ける、いわゆる普通の貯金として紹介します。
インカムゲインには利息が該当します。
キャピタルゲインはもちろんありません。
意外と知られていないですが、預金の利息には20.315%の税金が掛かっています。
ですので、預金利率が0.01%とすると、実質利回りは0.01%‐(0.01%×20.315%)=0.0079685%となります。
代表的な金融商品の利回りの考え方はこんな感じかな!
先生が最初に言ってた、インカムゲイン・キャピタルゲイン・コストの3つをどの金融商品にも当てはめて考えることができるんですね!
そうなんだよ!だから、どの金融商品が最も利回りが良いかは、これまで紹介してきたような計算例を参考にすると良いよ!
つまり、利回りを他の金融資産と比較するには税金まで考慮したインカムゲイン・キャピタルゲイン・コストを踏まえた実質利回りで比較しようってことですね!
利回りと利率や金利との違い
利回りと似たような言葉がいくつかあります。
- 利回り
- 金利
- 利息
- 利率
- 利子
大きく大別すると、利回り・金利・利率は『%』で表示され、利息・利子は『円(金額)』で表示されます。
どれも似たような意味合いで、投資対象となる金融商品によって呼び方が異なるだけです。
特に難しく考えずに、割合(%)と金額(円)で示されているものとだけ覚えておけば差し支えないと思います。
まとめ
- どんな投資でも以下の利回りに関する3要素を基準に考える
- 異なる投資対象で利回りを比較するには上記全てを計算して考える
–インカムゲイン:家賃収入、分配金、利息など
–キャピタルゲイン:株や仮想通貨などの売買時の差益
–コスト:売買手数料、為替差益、スプレッド、税金
どんな投資にも共通して利回りに関する3要素が存在します。
投資対象とする商品(不動産、株、債券など)によって利回りは異なります。
また、それぞれの商品によっても投資スタイルによって利回りは異なります。
例えば不動産投資なら家賃収入狙いでいくのか、売買差益を重視するのか。
FXであれば、スワップ狙いなのか、為替差益なのか。
大別すると、インカムゲイン狙いなのか、キャピタルゲイン狙いなのかに別れます。
運用する商品や戦略が異なれば、期待できる利回りも当然変わってきます。
自分がどの商品をどんな投資スタイルで運用するのか?それを決めるためにも利回りの正しい計算方法や意味を知っておくことは重要です!